政府には、法や制度を決定もしくは変更する権限があります。また、政府は政策を立案して特定の事柄を推進することもできます。これらの政府の動向によって、特定の業界が儲かりだしたり、逆に閑古鳥が鳴くようになったりします。
自分が投資している企業には、どんな法律・政策変更リスクがあるか日頃から考えておくといいと思います。
この記事では、株価が政府の法や政策の変更によってどのように変化したかを見ていきます。[adsense]
太陽光発電と価格改定
東日本大震災の後、民主党は原発を停止させ、自然エネルギーを推進することにしました。太陽光で発電した電気を高値で買い取る制度を始めたのです。これによって、太陽光発電と関連のある銘柄は業績を上げ、株価も上がりました。たとえば、田淵電機(太陽光発電用パワコン)や日創プロニティ(メガソーラー用架台)です。2012年に買取制度が始まりましたが、買取価格が高すぎたことから2013年以降、電力の買取価格が下方修正されました。この買取価格の修正で、太陽光発電は徐々にピークアウトし、それにともなって太陽光発電関連銘柄の株価も下がってきています。
節税と節税対策
いつの時代でも、人は税金を少なく払いたいものです。FPGは、減価償却制度を利用した節税効果のある金融商品を販売しています。
順調に増収増益の業績をあげ、株価も人気化しましたが、2015年5月26日に、政府が航空機リース等を利用した節税に報告を義務付ける検討に入ったという報道が行われました。
つまりFPG等が行っている節税スキームへの牽制が行われたわけです。この報道を受けて、FPGは売られました。下図のオレンジで囲まれた部分が報道のあった時期です。
調剤報酬の改定と調剤薬局株
調剤薬局は、薬を調剤することで、お客さんと政府からお金をもらいます。ただ、どういった行為でどれくらいお金を貰えるかは政府が決定しています。
2015年、調剤薬局株は、好業績の企業が多く、株価は順調でした。しかし、調剤薬局が儲けているということは、国民と国の医療費負担が増えているということでもあります。
財政赤字に苦しむ日本が、これを見逃すわけがありません。2015年10月30日に財務省が提出した次年度の調剤報酬改定案は、調剤薬局の収入を大きく減らしかねないものでした。
この案がニュースとなって流れ、投資家の間に行き渡ると、好業績を出している薬局株が下がり出しました。
このように政府が収入の多寡の決定権を持つ業種の株では、政府の動向に株価が大きく影響されます。
下記は日本調剤のチャートです。緑で囲まれた時期に、日本調剤は上方修正を出し、株価を上げましたが、黄色で囲まれた時期に調剤報酬改定案のニュースが出て、株価が下がっています。
携帯電話代金が高すぎると安倍首相が発言して携帯各社の株価が下がった
2015年9月に、安倍首相は、携帯電話料金が高止まりしていて、料金を下げる必要がある旨の発言をしました。総理大臣が携帯料金に口を出すのはおかしい気もしますが、この発言を受けて、ドコモ、ソフトバンク、KDDI各社の株価は下がりました。携帯料金が下げられれば、これら企業の業績が悪化することが予想されるからです。
チャートの赤枠で囲った部分が、上記発言のあった時期です。
政府が特定分野を推進するリスク
最後に政府が特定の事業領域を推進することのリスクを指摘しておこうと思います。
政府は、自ら特定の、有望と思える分野を推進することがありますが、それはたいていうまくいきません。
官僚はビジネスマンではありませんので、市場の機微には通じていませんし、失敗した場合に責任をとったり、成功した場合にフィードバックを受ける仕組みもありません。また、株式会社のようにトップの指令の元、機敏に動くこともできません。
なので、政府主導(またはオールジャパン)で何か事業が進もうとしている場合は、その企てが失敗に終わるだろうという前提で投資プランを組むべきです。
過去の産業政策の失敗についてはこちらの記事が詳しいです。