新規上場した株が、上場の翌年には一転して減益に陥り、株価が下落するような事態が増えている。上場するまでは、増収増益で来て、上場後も発展していくはずだったのに、上場を機にだめになっていく。
こうした現象はもちろん偶然によることもあるだろう。急激なビジネス環境の変化でこれまでの計画が狂ってしまったような場合である。
しかし、上場後、即、企業の業績がだめになる場合、上場を画策した経営者側はそうなることがわかっていたから敢えて上場した可能性もある。
IPO株の初値は今でもPERが100倍に達するような異常な高値をつけることが多くある。公募価格であっても、PER20倍以上がざらで、新規上場は、経営者からしてみれば自分の株を高く売り抜ける絶好の機会になっている。
そのような株を買った個人投資家は当然、損をすることになる。だから、投資家は新規上場した企業が、上場ゴールを狙っているのか、それとも上場して資金調達をし、真面目に業績を成長させようとしているのか見分けなければならない。
上場ゴール企業にありがちな特徴
大きな夢を語っておきながら上場直後の株価が最高値で、後は株価が下がっていくだけの上場ゴール企業の特徴について考察してみたい。上場ゴールになりがちな企業には下記の特徴があると思う。
1.株式の売出比率が高い。
新規上場する企業が売り出す株は、それまでに株を保有していた株主が売り出す株と公募株に分かれる。公募株を売って得た資金は、企業のもとにいくので、その金額は事業資金にまわるはずである。
一方、売出株は、上場までに株主であった株主が、上場を機に株を売って利益確定をする株であるので、売出株が多い新規上場企業は、既存の株主が「この企業はもうこれまで」「ここで利益確定をしたい」と思っている可能性が高い。
であるから、新規上場する企業の公募株式数のうち、売出と公募の比率に注意する必要がある。売出の比率が多い企業は、公募が多い企業と比べて、上場ゴールの可能性が高い。
私は96ut.kabuというサイトで新規上場企業の情報を見ているが、下図のように「売出株式比率」が記載されているので、この比率が高い企業は警戒した方がよいと思う。
2.ビジネスモデルに無理がある、市場が小さい
常識で考えてビジネスモデルに無理がある企業の株は買わない方がいいだろう。上場ゴールになる可能性が高い。
近年の例で言えば、マイネット(3928)のビジネスモデルには無理があると思われた。マイネットの事業は、他社から古いゲームの権利を買い取ってそれを運営するというものである。
スマホゲームの事業環境がすでに厳しくなっていたのに、他社が売りたがっているゲームの権利を買い取って運営しても、ババを掴まされるだけになるのは予測できることである。あるゲームがまだまだイケると思われていれば、企業がそのゲームの権利を他社に売るはずがない。マイネットは他社が見切りをつけたものを買っているわけだから、ビジネスモデルがすでに危うかった。
マイネットの株価は上場の翌年は上がったが、それ以後低迷している。
それから、企業が扱う市場が小さいのも問題だろう。例えば、アサイージュースの販売を手掛けるフルッタフルッタ(2586)などである。常識的に考えて、日本のアサイージュースの市場は小さいし、今後も急拡大するとは思われない。
株価は上場後が一番高かった。
3.事業の成長計画に「新規事業」や「M&A」が含まれている
マザーズに上場する企業は、今後いかに成長していくかを「成長可能性に関する説明資料」で説明する。上場する企業が本業で成長していく見通しを立てているのであれば良いが、本業ではなく、今は存在しない新規事業やM&Aで成長を目論んでいるのであれば、その企業は危険である。
新規事業がうまくいく保証がないし、M&Aもうまくいくとは限らない。
4.企業名に流行ワードを含ませている
上場したばかりの株は、イメージが先行して株価が形成されることも多い。したがって、流行のキーワードが会社名に入っていると有利である。
企業の事業内容がその会社名と一致しているのであればよいが、企業の事業内容を誤認させ、株価を高くするために企業名に流行ワードを用いているのであれば、その企業は上場ゴールの可能性が高い。目論見書には企業の沿革が書かれているが、企業が上場後のウケを狙って、事業内容と無関係な企業名に変更をしていたら、怪しいと思っていいのではないだろうか?
5.似たような事業内容の企業がたくさんあって競争が激しい
似たような事業内容の企業が既に多数存在し、競争が苛烈なのであれば、その新規上場株の株価は冴えないものになる可能性が高いのではないだろうか?
元々競争が苛烈で参入企業の業績がよくないのであれば、その業界の新規上場株は避けるべきだろう。近年では、家賃保証サービス、業務補助を行うネットサービスなどがこれに該当する。
6.他社の参入が簡単なビジネスをしている
5と似たような内容だが、例え今は競争相手が少なくても、他社の参入が容易なビジネスをしているのであれば、やがて競争が苛烈になって成長するのが難しくなるだろう。
近年上場した企業でいえば、和心(9271)が当てはまるのではないだろうか?観光客相手の着物レンタルが主力事業だが、この事業は他社の参入が容易である。
以上、上場ゴールになりそうな企業の特徴を羅列してみた。