企業の情報がコンパクトにつまった四季報
四季報は東洋経済新報社が出版している上場企業についての情報誌で、毎年4回発行されています。3月、6月、9月、12月の15日前後に発売されます。予約購読をすると書店より1日早く手に入るようです。(地域によっては、発売日と同日に届くようです)また、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などに口座を持っていると、証券サイトから四季報を見ることができます。証券会社を選ぶ際の参考にしてください。四季報は1冊約2,000円なので、これら証券会社に口座を作ると、年間8,000円分お得です。[adsense]
四季報は情報がコンパクトにまとまっており、既存投資先企業の最新情報ついて知るだけでなく、新たな投資先発掘に役に立ちます。また四季報記者が調べた業績の独自予想も非常に価値のある情報です。四季報のどんなところを見るといいか紹介していきたいと思います。
四季報を見るポイント
四季報の構成
四季報は下図のような構成になっています。
企業の基本的な情報
Aの部分は、銘柄コード、企業名、決算月、設立年、上場年、【特色】、【連結事業】(または【単独事業】)、【海外】が記載されています。
決算月が、末日締めの場合は、N月という風に書かれています。末日締めでなく、たとえば、1月20日締めの場合は、「1.20」のように書かれています。
【特色】には、その企業がどんなビジネスをしているか書かれています。ここでその企業の概況をつかみましょう。
企業は、1種類のビジネスだけでなく、複数のビジネスをしていることがあります。【連結事業】(非連結会社の場合は【単独事業】)の項目で、その企業がやっているビジネスの比率を見ることができます。たとえば
飲料販売84(4)、飲料受託製造7(11)、食品製造販売9(1)
と書いてある場合、売上高の構成比が、飲料販売84%、飲料受託製造7%、食品製造販売9%という意味です。かっこの中の数値は利益率を表していて(原則、営業利益率)、上記例だと、飲料販売の利益率が4%、飲料受託製造の利益率が11%、食品製造販売の利益率が1%ということになります。
【海外】は、売上高のうち、海外での売上高が何%かを示しています。【海外】の比率が高い企業の場合、円安になると海外分の業績が円換算した際に大きくなります。また、【海外】の比率が高く、さまざまな外国に進出している企業は、業績がリスク分散されているといえます。たとえある国で売れなくても、他の国でカバーできる見込みがあるからです。
業績や状況の分析
Bの部分は、その企業の業績や置かれている状況の分析です。ここでその企業の業績について、四季報記者の予想を読むことができます。
企業の業績予想は、強気すぎたり保守的すぎたりすることがあるのですが、この欄に、企業の業績予想と実績の差についてのコメントが書かれます。「下振れ余地」、「会社予想過大」などと書かれていた場合、四季報記者の見立てでは、業績予想が下方修正される可能性が高いということですので注意しましょう。逆に「会社計画は過小」「上振れ余地」などのコメントがある場合は、四季報記者の見立てでは、企業の実績が予想を上回りそうだということです。
海外での売上が多い企業は、為替差益や為替差損が業績を左右しますが、企業によっては、業績予想に為替差益や為替差損を見込んでいないところもあります。「為替差益みこまず」と書かれている企業の場合、為替が円安に振れると、為替差益分、業績が予想に対して上振れることが多いです。
株式市場では、特定のキーワードが人気となることがあります。それらのキーワードと関連する企業の株価が大いに買われます。こういう株価を動かすキーワードを「材料」といいます。直近では、「ロボット」「IOT」「iPS細胞」などが材料になりました。Bの部分には、この材料を探すヒントが含まれていることが多くあります。材料相場になったら、Bの欄を見て、関連銘柄を探してみましょう。
※材料相場になってから、材料にあてはまる銘柄を探すよりも、材料になりそうな言葉を意識して、四季報を読むとさらにいいでしょう。
株主、役員、連結企業の状況
Cの欄には、主要な株主、役員、主な連結対象企業が記載されます。
主要な株主を見る場合は、どのような株主が株式を多く持っているかに注意しましょう。株主名のあとの数字は、所有する株数、かっこの中の数字は保有している比率です。※参考画像はクルーズ(2138)の株主欄です。
企業の姿勢には、大株主の意向が強くでます。優秀なオーナー経営者やファンドが筆頭株主だと期待できるでしょう。逆に、筆頭株主の株保有率が低く、株主が分散している場合や、現状に満足している個人が筆頭株主の場合はあまりよくありません。
<浮動株>は、株主が安定していない株の比率です。<浮動株>が少ない企業の株式は、何か良い材料が出た際に人気化しやすいといえるでしょう。
株式、財務、指標、キャッシュ・フロー
Dの欄には株式関連のデータ、財務に関するデータ、指標に関するデータ、CFに関するデータが記載されます。
株式関連のデータには、発行済み株式数、株式の売買単位(単元株数)、時価総額が記載されています。時価総額が小さい方が、何か良い材料が出た際に株価が大きく跳ねやすいです。
財務に関するデータには、総資産、自己資本、自己資本比率、資本金、利益剰余金、有利子負債が記載されています。ここでは、自己資本比率を確認しましょう。自己資本比率が高いと財務が安全で、低すぎると危険な状態です。自己資本比率が20%未満だと注意した方がいいでしょう。自己資本比率についての詳細はこちらをご覧ください。
指標に関するデータは、ROE、ROA、調整1株益、最高純益、設備投資、減価償却、研究開発が記載されています。「予」がついている数値が、今期の予想数値ですので、指標を見る場合は、予想数値を重視しましょう。ここでは、ROEのほかに、設備投資と研究開発を見ましょう。これらの金額が多い、または増加している企業は、新規投資に積極的な企業である証拠です。ROEとROAについては、こちらをご覧ください。
資本移動、株価、進捗率、業種、比較会社
E、F、G、H、Iはそれぞれ資本移動、株価、進捗率、業種、比較会社が記載されています。
ここでは、まず進捗率に注目しましょう。進捗率とは、会社予想の営業利益に対して、直近の決算の営業利益がどの程度進捗しているかを示しています。過去3期平均の進捗率も記載されていますが、今期の進捗率が、3期平均を上回っている場合、業績予想を上方修正してくる可能性が高いといえるでしょう。
比較会社には、業種や時価総額、営業エリアなどを考慮して、その企業と似た企業が記載されます。特定の分野の株が人気化した場合、ここから似た企業を探すのがいいでしょう。
会社住所、従業員、証券会社、銀行、仕入先、販売先
J欄には、会社住所、従業員情報、幹事証券会社、主取引銀行、仕入先、販売先が記載されています。
従業員情報には、社員数、社員の平均年齢、平均年収が記載されています。
証券会社のところには、主幹事証券会社のほかに、監査法人が記載されています。監査法人が大手であるほうが、その企業の決算情報を信頼できます。企業の決算の確からしさがいまいちな企業を、専門的に相手にする監査法人も存在します。怪しい監査法人が担当している企業は警戒してください。
ある企業の業績がいい場合は、その仕入先をみてみましょう。仕入先の業績もよくなっている可能性があります。逆に、販売先の企業の業績が悪い場合は、その企業の業績もよくない可能性があります。注意してみましょう。
業績、配当
K欄には、過去の業績、来期の業績予想および配当が記載されています。
業績の推移をみることで、成長している企業なのか、低迷しているの企業なのかを知ることができます。成長している企業の方が好ましい銘柄です。
株価にとって、重要なのは、過去よりも将来なのでした。来期の業績予想には必ず目を通しましょう。今期の業績がよくても、来期の業績予想がよくない企業は株価が上がりにくいです。
ざっと調べたいときはABK欄とチャートを見よう
時間が無いときや、ある企業について軽く知りたいときは、四季報のABK欄とチャートを見ましょう。ここを見て、興味を持てたら、さらに詳細を調べていくのがいいと思います。
紙の四季報には紙なりのよさがある
SBI証券などに口座を持つと、証券会社のウェブサイトから四季報が読めるという説明を上でしました。しかし、紙の四季報には、紙ならではのよさがあります。それは、未知の企業を開拓していく際に、紙の四季報の方が使いやすいという点です。株で儲けるには、なるべく多くの企業を知っておいた方がチャンスは増えます。紙の四季報をぱらぱらめくり、どんどん知っている企業を増やしていきましょう。すぐには、投資したい企業がみつからなくても、知っている企業が増えていくことは投資家としての実力を強化していることになります。
続きは、四季報を読んで稼ごう②に記載します。