中小企業が新技術を発表した際に、株式市場は、それが業界の景色を一変させるかのように受け止め、株価を高騰させることがある。
この記事を書いている直近(2016年12月)であれば、下記の銘柄が新技術の発表と共に株価を高騰させた。
・安永(7271)
新技術の内容は、リチウムイオン電池の寿命を従来比12倍にするというものだ。
株価は500円台から最高3,000円台まで6倍に上がった。この技術が、株価の高騰が示すほどの企業価値の上昇をもたらすかどうかは、時間が経過してみないとわからない。[adsense]
しかし、過去の類似の株価の高騰とその後を見る限り、中小企業の新技術が業界を一変させ、その企業の企業価値を何倍にも短期間で上げることは難しい。その主な理由は、
- その他の企業(特に大企業)も類似の技術を開発していることがある
- 新技術の売上は、過去の売上の置き換えになりやすい
- 新技術が製品となり、売上に結びつくまでに数年を要することが多い
というものだ。
大企業の場合、何か目新しい技術を開発したとしても、プレスリリースに出さないことが多い。大企業全体の売上から鑑みて、その新技術が企業の業績に重要な変化をもたらすとは考えにくいからだ。なので、どこかの中小企業が新技術を発表したとしても、類似の技術を同業他社が保有していることはありうる。
また、新技術が製品化された場合、その売上がゼロから有へ変化する場合より、既存の製品の置き換え(replace)となることが多い。そういった場合、取引先が増えるなどしない限り、売上の伸びは限定的になる。
株価は数日間で何倍にも高騰するが、企業の実際の経済活動には長い年月がかかる。新技術が製品に組み込まれ、売上となるまでに数年を要することも珍しくない。このような場合、高騰した株価は少しずつ落ち着きを取り戻し、元の位置に近いところまで戻っていくだろう。
中小企業の新技術発表に対する投資戦略
新技術の発表により、株価の高騰が見込まれる場合は、なるべく初動で買うようにすべきだ。新技術がもたらす収益とタイムテーブルが明確でない場合、その新技術が企業にもたらす価値の額は曖昧である。高騰した株価は、いつ下落に転じてもおかしくはない。
もし初動で買えなかった場合は、後追いは謹んだほうがいいと思われる。
相場の高騰がいつまで続くか、正確に予想できないので、空売りはやめておいた方がよい。
高騰相場が発生した半年後に、信用期限が切れる玉が出てくるので、それを狙って少額の空売りを入れるのは面白いかもしれない。